ステムキュアレポート症例報告5
すがわら動物病院 院長
菅原 高士 先生
【症例9】トイプードル 10歳2か月 雄 去勢 体重4.3kg
診断
胸腰部椎間板ヘルニア(G3)、頸部椎間板ヘルニア(G2)合併症例
合併症
初期胆嚢粘液嚢腫
併用薬
ウルソ、スパカール
【経過と症状】
2024年2月24日、四肢麻痺発症。日常生活動作は著しく低下(飲食介助の負担が大きかった)し、活動性も認められなかった。26病日、MRIで、頸部および胸腰部の椎間板ヘルニアと診断されたが、紹介病院で外科手術適応外と判断されたため、54病日にステムキュア(1mL)を1回投与した。2週間ほどで頚部の挙上がみられ、圧迫排尿が不要となった。次いで、86病日ほどで前肢を伏臥位、後肢を横臥位にすることが可能となり、144病日頃には排便時に後肢で立ち、踏ん張る姿勢をとれるようになったが、姿勢の維持は困難であった。181病日頃には自力歩行が可能となった。飼い主の希望により2回目以降の投与は見合わせた。
【主治医コメント】
トイプードルのC5-6ヘルニアは外科手術の難易度が高く、専門医にも手術適応外と判断された。ステムキュアの1回投与に加え、手根関節
の装具の使用(投与2か月後から装着)と吊起帯を用いた足裏負重のリハビリ(反射を利用し神経刺激と筋の収縮を誘発)を組み合わせる
ことで、麻痺は解消し、正常な自力歩行が回復した。従来であれば諦めるしかなかった症例であり、再生医療の可能性を改めて実感した。
・症例動画
春山動物クリニック 院長
松元 幸一郎 先生
【症例10】柴犬 11歳3か月 雄 去勢 体重13.8kg
診断
腰部椎間板ヘルニア(G3)
合併症
アトピー性皮膚炎 胃拡張捻転
併用薬
グラピプラント、ポリ硫酸ペントサンナトリウム
【経過と症状】
兆候から1日で急激に発症した。疼痛緩和としてグラピプラント、ポリ硫酸ペントサンナトリウムの投与を行った。615病日より細胞治療の
ステムキュア(2mL+1mL)を週1回、3回投与を行った。投与中の有害事象などは無く、622病日にはG3⇒G2へ改善した。また併せて飼い主に
よるQOL評価を行い、治療前(615病日)は39/75点、投与終了後4週(657病日)は50/75点へと改善した。特に身体機能の動作、衛生項目に
おいては、3ポイント以上の改善となった。(表1参照)副次的な効果とはなるが、皮膚症状の改善も飼い主から評価された。
【主治医コメント】
発症より600日を経過した胸腰部椎間板ヘルニアの柴犬(T12-L3)にステムキュア(2mL+1mL)を用いて、週1回、3回投与を行った。ステムキュア投与後TSCIS評価(歩様)は、「お尻を地面につけることは無い」へと改善した。固有位置感覚も3回目の投与終了後には、「低下」から正常に回復した。また歩様の改善とともに、長年患っていた皮膚炎の改善も副次的な効果として満足度は高かった。標準療法にて効果不十分な症例において、選択の1つになると思われる。
・症例動画
薬効薬理
一般的に、間葉系幹細胞(MSC)が局所環境の剌激で活性化されて産生する液性因子[血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、
トランスフォーミング成長因子-β (TGF-β)、プロスタグランジンE2 (PGE2) 、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ
(IDO)等]のパラクライン効果*により、免疫を調整し、微小循環障害を改善することにより、疾患動物が本来有する
自然治癒力が活性化され、身体機能が回復すると考えられています。
* パラクライン効果:細胞からの分泌物が、拡散などにより近隣の細胞に作用すること。
