大阪府:A動物病院
犬の外耳炎には、複数の原因菌が関与していることがあり、エンピリックセラピーが奏功しない場合も多い。
エンピリックセラピーの際には、起因菌がどの抗菌薬に感受性があるのかを把握しておくことも重要である。今回は、フラジ
オマイシン含有軟膏*からビクタス®S MTクリームに変更したことによって治療が奏功した症例を報告する。
(*:成分;硫酸フラジオマイシン、シオストレプトン、ナイスタチン、トリアムシノロンアセトニド)
初診(第1病日)
痒みと滲出液を抑えるために、フラジオマイシン含有軟硲を1日1回、適足を6日間(第1病日~第6病日)連続投与した。
第7病日
臨床症状に改善が見られなかった(写真2)ので、耳垢を採取・グラム染色を実施して顕微鏡検査を行った。その結果、マラセチアは
ほとんど見られなかったが、二菌が連鎖しているグラム陽性球菌(顕微鏡写真の矢印)が認められたため(写真1)、腸球菌の関与
を疑い、感受性のあるビクタスSMTクリーム6gボトルを、1日1回、適量を7日間(第7病日~第13病日)投与することにした。
第13病日
外耳道の滲出液が見られなくなり、外耳道が乾燥し、明らかな改善傾向が確認された(写真3)。
また、飼い主様の稟告でも、ここ数日痒みがおさまっているとのことだったので、以後経過観察とした。
外耳炎の原因菌には、多くの細菌が挙げられている(表2)。
外耳炎由来菌の分離頻度から考えると、検出率の高い緑膿菌やマラセチア、ブドウ球菌に感受性がある薬剤を選択すること
が妥当と考え、今回はこれらに抗菌力を示すフラジオマイシン含有軟膏を使用した。
投与開始後6日間経過しても期待した効果が得られなかったため、耳垢細胞診を行ったところ、二菌が連鎖しているグラム陽
性球菌(写真1)が多数認められた。このため、原因菌として腸球菌を疑い本菌に有効なオルビフロキサシンを含有するビクタ
ス®S MTクリーム6gボトルに治療薬を変更した。
初診時に耳垢細胞診(グラム染色)を実施できれば球・梓菌の確認や菌のかたまり方などを確認することができるが、様々な
要因によって実施できないこともある。今回は再診日を1週間後に設定していたので、臨床症状の確認と耳垢細胞診(グラム
染色)の実施にて腸球菌を疑うことができた。エンピリックセラピーを実施する際には、治療効果を確認するため、1週間後に
再診日を設定することが望ましいと考えられた。