日本獣医皮膚科学会認定医
工藤動物病院 工藤 圭介 先生
近医にて7歳から2%クロルヘキシジンとミコナゾール硝酸塩のシャンプー1回/月全身洗浄、オクラシチニブ錠0.5mg/kg
BIDで治療をしていたが、投薬を続けるも、痒みの再発と皮膚病変の良化が認められず当院を受診した。
2024年8月4日受診時に、顔面、耳介、顎下、腋高、内股、肛門周囲、四肢の脱毛と紅斑を認め、耳道内、腋窯、内股は顕著な
苔癬化を認め、診察台上でも四肢を常に祇めていた(写真1~4)。
人が顔面を触ろうとすると怒り行動が認められた。来院時の血液検査及び血液生化学検査ではALP、ALT、TGの高値
が顕著で、血液中lgE値でコナヒョウヒダニが686ng/mL及びカモガヤ584ng/mLと基準値の6倍ほどの検査値が認め
られた。(表1)
問診、視診、犬種、血液lgE値からFavrotのアトピー性皮膚炎の診断基準に合致する点が5つ以上のため、アトピー性皮膚炎と診断した。
8月19日痒みのVASスコアが10から5に減少した(図1)。アレリーフ®ローション塗布は痒い場所のみ1日1回塗布を
指示し、内服はプレドニゾロン0.5mg/kgSIDに変更した。
9月4日VASスコアが4に減少し、顔面の掻把行動が認められなくなった(写真7~10)。
12月15日にVASスコアが2まで減少したため、プレドニゾロン内服を中止し、シクロスポリン内服を5mg/kgSIDに
変更した。また、アレリーフ®ローションについては1日1回の塗布から痒みの症状を呈する時のみの使用に変更した。
2025年1月16日には痒みはほとんどなくぐっすり眠り、散歩に集中することが可能になった(写真11~14)。
近年、アトピー性皮膚炎の治療はオクラシチニブやイルノシチニブ内服が主流となりつつある。ただし、両剤は投与期間中の
止痒作用は顕著だが、皮膚症状に改善が認められない場合、体内から薬剤が消失すると痒みを再発する傾向にある。皮膚の
構造変化が顕著な場合、シクロスポリンは有効であるが即効性がないため、今ある掻把行動を止めることが困難である。
そのため本症例はシクロスポリンにプレドニゾロンの内服を併用することで、痒みを抑制した。なお、両剤は併用の相互
作用によりシクロスポリンの血中濃度が上昇するため、安価でシクロスポリンを使用することが可能になる。ただし本症
例では四肢の祇性行動を早急に止める必要性があったため、アレリーフ®ローションを併用した。これにより14日目には
プレドニゾロンを半量に減量でき皮膚病変の改善も早期に認められた。早期に強い痒みを抑えることはストレスを軽減
するうえでも重要で、治療開始2か月後には顔に触れても全く怒らなくなっていた。最近ではステロイド剤を極力初めから
使用しない獣医師も増えてきているが、投与計画ができていれば使用も視野に入れるべきである。注意点としては外用
ステロイド剤も内服と同様の副作用を常に考えて使用するべきであるので、飼い主には必ず漸減していくことを治療開始時
に説明しなければならない。